スーパー!
あらすじ
さえない中年男フランク、平凡な生活を送っていた彼だが妻がセクシーなドラッグディーラーの後を追って家を出てしまう。
失意のフランクは愛する妻を取り戻すため、彼はお手製のコスチュームに身を包みスーパーヒーロー“クリムゾンボルト(赤い稲妻)”に変身。
夜の町をパトロールして配管用のレンチでドラッグの売人を叩きのめしていく。
イカれた女の子ボルティーを相棒に、危険地帯の犯罪に立ち向かうフランクだったが……。
登場人物
フランク…妻を愛する冴えない男。仕事はコック
リビー…本屋でアルバイトをしているイカれてる女。ボルティーに扮する
サラ…フランクの妻で元薬物中毒者。フランクを捨てジョックの元へ走る
ジョック…ヤクの密売人。サラを再び薬物中毒にして奪う
一言コメント:脇役がいるから主人公は輝ける
感想(ネタバレ注意)
簡単に言うと、主人公が脇役に助けられたりしながら、真の幸福を手に入れるお話です。
主人公はフランクではありません。妻のサラです。そしてフランクは主人公の相手役のヒーローではなく、彼女を助ける脇役その1です。
主人公を助ける脇役その1に焦点を当てた映画になっています。
これね、凄いおもしろかった!
フランクは平凡どころか地味で冴えない男なんですよ。
そんな男が分不相応な美人な奥さんを手に入れたんです。
金持ちでもイケメンでもなければ職業もコックな男がですよ?
当然寝取られますよね。だってフランクには何も魅力がないから。
しかも相手の男はワイルドで大好きなヤクをタダでくれるんです。
地味で大好きなものもくれない旦那なんか目じゃありませんよ。
見てる方はそんな女捨てて分相応な女を嫁にしろよ!と思っちゃうんですが、フランクは決してサラを諦めないんですよ。
必死に妻を取り戻そうとするフランクが本当に不憫で健気で。
ジョックに散々バカにされてフランクは『正義のヒーロー』に目覚めるんですが、そんなフランクの相棒のリビーはこのどこか切ないストーリーに違う風を吹き込んでくれてとても良い。
フランクは一応悪い奴を倒したいという正義の心を持っているんですが、リビーはアメコミ被れで完全にイカレてて暴れられたり目立てればそれでいいみたいな。
このリビーを演技派エレン・ペイジが見事に演じ切っています。
フランクとリビーはサラがいるヤク売買の現場に向かうんですが、そこでリビーに「とあること」が起きてフランクブチ切れ、ジョック達を全滅させるために「ヒーロー」ではなく「ただの狂人」になります。
そして、ジョックに言われてしまうんです。
「お前だって悪人だろ」と。
割り込みされただけで暴力に訴えたり、リビーが殺されたからってやり返して皆殺しにしようとしたり。
自分と何が違うのだ、と。
これね、凄く難しい事だと思うんです。
確かに割り込みは悪い事です。でも、ボコボコにするほどの事か?というと自分は違うと考えます。
同じように、自分から危ない所へ来たんだからリビーの死は仕方ない事の様に思えます。
でもそれはあくまで自分の考えで、割り込みは万死に値する罪だと思う人だっているし、危険地帯でも殺されたら報復は当然だと考える人もいます。
それと同じで、「正義」なんて人によって違うんですよね。
もしかしたら、ジョックにしてみたら更生したとはいえ元々ヤク中だった女に大好きなヤクをタダで上げてる事は「正義の行い」と思ってるかもしれない。
でもフランクにとっては割り込みも妻を奪った事も絶対に許せない罪で、ボコボコにされて当然だと思ってるんですよ。
この映画が言いたかった事は、「人によって価値観も正義も違う」ということなのかなと。
そして、「脇役はけして主人公になれない」と言う事も。
ヒーローになりたかったフランクとリビー。
美人の妻を悪い奴から救い出せたが、結局は妻は自分の元を離れ、結婚し幸せな家庭を築くサラの「過去の一ページ」になってしまうフランク。
殺人をいとわないほどヒーロー被れだったが、結局倒すべき悪役に殺されるリビー。
人間には生まれた時から自分の立ち位置が決まっていて、そこから出ようとする事は出来ないという事が言いたかったのかな。
『キック・アス』となにかと比較されますが、『キック・アス』はヒーローになれた男の話、こちらはヒーローになれなかった男の話だと思います。
コメディーでありながらもどこか切なく、悲しい男の話です。
間違いなくオススメですね。
個人的点数:81点
(エレン・ペイジの見事なイカレ女の演技に注目!)