ドム・ヘミングウェイ
あらすじ
凄腕の泥棒としてその名を轟かせていたドム・ヘミングウェイは、ボスの身代わりとして入った刑務所での12年の刑期を終え、久しぶりに外の世界に舞い戻ってきた。
早速ドムは、相棒のディッキーと共にボスのMr. フォンテーヌの元へと向かい、身代わりとなった報酬をいただく。
そしてその夜、久しぶりの自由を楽しむかのようにドムは盛大に遊びまわるが、それも束の間、ドムは隙を突かれて報酬を持ち逃げされてしまう。こうして無一文となったドムは、疎遠となっていた娘のエヴリンを頼り…。
登場人物
ドム・ヘミングウェイ…凄腕の泥棒。短気
ディッキー…ドムの相棒。知的で落ち着いた雰囲気
Mr. フォンテーヌ …ドムのボス
エヴリン…ドムの娘。身勝手なドムを嫌う
一言コメント:親子の関係って、色々複雑で簡単にはいかないよね
感想(ネタバレ注意)
ジュード・ロウ主演のコメディ映画です。
正直、想像していたものとは違っていましたが、
私は案外嫌いじゃないです(笑)。
見る前はダメダメな元泥棒が更生して娘との絆を取り戻す話かと思っていたのですが、
正確にはダメダメな元泥棒が更生と娘との絆復活への第一歩を踏み出すまでを描いています。
この微妙な違いが意外と重要で、映画終盤までドムはダメで屑な元泥棒です。
出所してすぐに会ったボスに喧嘩を売って次の日すぐに後悔したり、酔っ払い運転で事故って自身どころかボスまでケガをさせたあげく、金を女に持ち逃げされたり、事故にあって血だらけのまま会いに行ったせいで、久々に会った娘にはすぐに出てけと言われるし、
とにかくドムのダメで屑ぶりがこれでもかというほど長く描かれます。
1時間を過ぎてもドムが生活を改善する様子を見せないので、さすがにこれちゃんとハッピーエンドで終わるの?と不安になったり。
この映画、娘エヴリンの父親に対する態度が妙にリアルなんですよね。
通常、この手の映画だと父親を嫌がりながらも一緒に暮らしたり、なんだかんだでちょっと父親に情を示したりするのですが、この映画のエヴリンはラストのラストまでドムを徹底的に嫌っています。
たった一人の娘としてエヴリンに歩み寄ろうとするドムを徹底的に切り捨てます。
普段家族を放っていたくせに都合良い時だけ「娘」として家族扱いする身勝手なドムを徹底的に断罪するんですね。
「司法取引すれば2年で出てこれて、母の死に目にあえたのにアンタはそれをしなかった!一人になった私を育ててくれた養父を出所後すぐに暴行とか身勝手だろ!」と。
父さんと呼んでと懇願するドムを無視して「ドム」呼びする徹底ぶり。
でも普通に考えたら、このエヴリンの態度ってリアルで普通ですよね。
自分勝手で周りに迷惑をかけてきた人間に、急に父親顔されたら腹立つのは当然です。
特にエヴリンは12年もの間あっていなかったし、その間に自分勝手な父親に振り回されて死んだ母を見ているわけです。
自身も結婚して子供を持つエヴリンが父親を許さないのは当然だと思うんですよ。
でも、「明日一緒に母さんの墓参りにいこう」と誘ったドムを拒否ったエヴリンの、孫だけをお墓参りに連れて行って自分は入り口で待っているって態度は、どんなに屑な父親でもやっぱり親子としての情を完全には捨てきれないというある意味リアルな態度ですよね。
父親を許すことはできない、でも完全には切り捨てられないという複雑な感情。
最後の最後に少し歩み寄りを見せラストチャンスを父親に与えたエヴリン。
親子の縁というのは色々複雑で難しいものだなと感じた映画です。
美男子として有名なジュード・ロウが汚い姿をしていたのもこの映画の見どころですが、ドムの相棒であるディッキーが私はお気に入りです。
短絡的で暴れん坊のドムをサポートするナイスガイぶりは、素敵の一言に尽きます。
また、ドムの孫の男の子もかわいかったですね。無口なんだけど、何故かドムに好意的で可愛げがありました。
一人のダメ人間が更生への第一歩を踏み出すまでの映画です。
感動とかは一切ありませんが、親子について少し考えてしまう映画です。
ぜひ、ご覧になってみてください。
個人的点数:68点
(ドムの相棒ディッキーの華麗なナイスガイぶりに注目!)